ガラスの器

そう、俺とあいつの関係をたとえるならば、
この言葉ほどぴったりの言葉はないやろう。
俺とあいつは大学3年の時からの付き合いや。
といっても、今にいたるまでには大変つらい思いをしてきた
んだけど、それはもう書くにおよばないやろう。
一言だけ言うならば、他の男の女を奪い取るってのは、
はっきり言って、フェアな方法では無理ってことかな。
ま、俺はできるだけフェアにやってきたつもりだったけど、
結局は、ガキが大人ぶっていただけなのかもしれない。
俺とあいつの間で口にしてはならないタブーな言葉は、
『結婚』の二文字。これを口にしたとたんに、
すべてが崩れてしまうことは容易に想像できる。
別れと復縁をもう4度も繰り返している。
そのうち二回は、『元彼のところに戻りたい』って理由で、
あとの2回は、『仙台を離れて暮らすことはできない』ってこと。
でも、今は遠距離だけど、それなりにやってきている。
この矛盾はなんなんだろうね。いずれは、といっても、
年齢的にあと1〜2年に確実に起こるだろう別れの予感。
俺も、就職したての頃は、『早く結婚したい』って
思っていたけど、今は違う。自分の仕事環境において、
それなりの居場所を見つけた。そして、努力次第でもっと
責任のある仕事を任せてもらえることが分かってきた。
だから、あと2年間は自分のために努力したい。
もし、それまでにあいつの気持ちが変わっていれば、
俺らは十分に幸せを掴むチャンスはあるだろう。
ただ…。あいつが何も変わらなければ、俺はあいつに
見切りをつけることになるかもしれない。
そして、こっちで別の女と付き合って結婚するだろう。
俺はあいつのことが好きやし、あいつも同じだと思う。
人生たった一度しかないから、躊躇はできない。
最近は、俺も作戦を変えて、あいつと二人でいろんなところに
出かけるようにしている。昔は、たまにしか会えないんやから、
家でこれでもかっていうくらいまったりとしてた。
でも、それじゃあ何も変わらない。二人で出かけて、
関東で生活していける自信をつけさせたいと思ってる。
だから、出かける時には、失敗は許されない。
特に、喧嘩は絶対に避けなければならない。
会えない時間の方が長いと、些細なすれ違いで終わりが来る。
一緒にいる時間が長ければ、喧嘩の一つや二つもあるやろう。
でも、会ったときには確実に言い方は変化もしれんけど、
プラスポイントを稼がないといけない。
少々、しんどいかもしれんね。あいつと付き合うのは。
でも、それでも、俺はあいつが好きだから、
たとえ終わりが来る可能性が高くても、わずかな
可能性に賭けて、あいつには内緒で頑張っているんだ。
10年くらい経って、でも、やはり隣にあいつがいて、
今書いたようなことを、『あの頃は大変やったんやでー。』
なんて冗談交じりに言えたら最高なんやけどな（笑）。
ま、それも近くて遠い未来の話。