2人目

うちの同期のA（女）が結婚することになった。
来年の6月だって。今日、俺らグループで
飲んだんだけど、その時に発表があった。
実は、Aと俺とはかなり親しい。
『親しい』といっても、男女のという俗っぽいやつじゃなく、
純然たる友達としてな。同じ事業所なので、
帰りに二人で飯を食って帰ることもある。
お互いにいい店を仕入れたら、二人で行ってみるくらい。
昨年の夏前に、お互いに悩みを抱えていた。
俺は、あいつとのことについて。Aは今の彼について。
Aは、去年の6月くらいに彼とすれ違い続きで、
ほんまに別れてしまいそうなくらい、追い詰められていた。
『彼の前では物分りのいい女でいたいから。』って、
たまの電話でも、自分のしゃべりたいことは極力話さず、
彼の話（グチ）を聞く役に徹していた。
みんなで飲んだときは、Aの話で盛り上がるくらいやから、
Aが聞き役に徹するなんて、俺には想像もつかなかったね(笑)。
そして、Aは仕事上の問題と、彼と付き合う上での『規制』に
疲れてしまったんだ。そんな時、俺にはよく電話が
かかってきたよ。あの時は、お互いいろいろ話をしたよな。
今までのこと、そしてこれからの事。どうすればいいのか。
俺は、彼と向き合う前に別れを切り出そうとしてたAを責めた。
どうせ別れるつもりなら、自分の言いたいことを言うべきだ、と。
それでもし彼が分かってくれないなら、それから
考えれば済むことだって。そして、Aは頑張ったよ。
今では、そんなことが合った事すら忘れてしまうくらい、
Aと彼は分かり合っている。すばらしいことだよ。
どちらかが、大きな譲歩をしているような付き合いは、
長く続くわけないんだ。何しろ、現状維持が目標になってるから。
今の日本の経済よりも不安定な男女関係にあって、
現状維持を願う付き合はツラい。ただ、ムダとは言わん。
そうやって、少しずつうまく振舞えるようになってくもんや。
俺とあいつもそう。最初は、あいつとの間にはどうしても
乗り越えることのできない壁があった。
でも、別れと復縁を繰り返すうちに、相手のことが
自然と分かってきた。たぶん、あいつもそうだろう。
ただ、あいつが変わったというより、俺の気持ちが変化した
だけなのかもしれないな。俺は、学生時代と比べると
自分でもずいぶんと寛容になったと思う。
あいつとの6年間がなければ、絶対に辿り着くことのなかった
心境だろうな。先を考えて、目標に向かって努力すること。
挫折を糧にして、自分の欠点を少しずつ埋めていくこと。
自分の気持ちを分かってもらう表現力、行動をすることの
大切さを感じたのがここ2年。正直に伝えることの難しさ。
何でもないとは分かっていながらも、真実を伝えられた時の
相手の気持ちの精神ベクトル。経験でしか培われないもの。
それを運よく、考えさせられた出会いだったと思う。
Aはきっと幸せに生きていくだろう。いろいろと
衝突はあると思うけど(笑)。でも、それも幸せの一つかな。
俺の目標は、あと一年間で、現プロジェクトにとって
必要不可欠な人材に成長すること。そして、
自信を持ってあいつと生きていくこと。
そんな気持ちを新たにした、Aの結婚の発表だった。